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明石市障がいのある人への差別について考えるフォーラムinあかし

差別禁止条例に弾み

6月28日、明石市子午線ホールで、「障害のある人への差別について考えるフォーラムinあかし」が行われました。障がい者差別解消法成立1周年を迎え、同法の意義や課題を探り、自治体の条例作りを進めるためです。

第1部の基調講演は、弁護士で前内閣府障がい者制度改革担当室長の東俊裕さんと、メインストリーム協会事務局長の佐藤聡さん。第2部では、安田敏郎さん(明石障がい者地域生活ケアネットワーク)と家根谷敦子さん(明石ろうあ協会)が加わり、シンポジウムが行われました。このフォーラムは、「市民幸福度日本1」を掲げる泉房穂明石市長のリーダーシップのもと、4月に同市障害者施策担当課長に就任した金政玉さんらが企画・運営したものです。フォーラムの概要と先進的取り組みを続ける明石市の障がい者施策について特集しました。(編集部)

差別の4類型

基調講演で東俊裕さんは、差別解消法の概略を説明しました。直接差別と間接差別、さらに合理的配慮について、具体的な例を挙げながら、なぜそれが差別となるのか?を説明されました。以下、要約です。

差別解消法は、@何が差別であるのか?

A何が求められている合理的配慮なのか?を市民にわかってもらうために作(つく)られました。国際的に差別には、4つの類型があります。それは、@直接差別、A間接差別、B関連差別、C合理的配慮の欠如です。

@直接差別の具体例を紹介します。A)バス旅行ツアーに申し込もうとしたら、「付き添いがあっても障がい者はお断り」と断られた。 B)スポーツクラブで聴覚障がい者が入会を断られた。理由は、「水泳中、気を失ったら声をかけてもわからないし、責任を取れない」とのこと、「気を失ったら健常者でも同じ」と言っても、「とにかくダメ」の一点張りだったそうです。

障がいを理由に他の人とは異なる対応をするこれらのケースは直接差別に当たります。

A間接差別の具体例は、地方自治体の一般採用試験において、申込用紙・受験票に自署すること、活字印刷物を読めること、電話対応や面接が可能なことを要件とする場合等です。採用条件として「障がい者はダメ」とはどこにも書かれていませんが、視覚障がい者は、活字を読むことができませんし、聴覚障がい者は電話対応ができないので、実質的に障がい者を排除していることになります。

自治体業務は、電話対応や印刷物でのコミュニケーションが必須の作業だけではありません。障がい特性に応じた作業を探そうとせず、入口で排除するのは、間接差別となります。

B関連差別としては、盲導犬を連れて飲み屋に行ったら入店を断られた場合などです。直接障がいを理由にしていませんが、障がいと切り離せないほど密接に関係していることを理由に(この場合盲導犬)排除(入店を拒否)しているので差別に当たります。

C合理的配慮をしないことも差別に当たります。これは、米国から始まり世界に広がった考え方です。例えば、車いす利用者が移動できるようにスロープやエレベーターを設置するという配慮ですが、これは「障がい者の特権」なのでしょうか?

無論そうではありません。健常者が垂直移動する場合には階段が用意されているのだから、障がい者にも垂直移動のための設備が整えられることは、同じスタートラインに立つために必要な配慮だからです。

さらに合理的配慮を進めることで利益を得るのは、障がい者だけではありません。今では、主要駅にエレベーターの設置は当たり前となり、高齢者・妊産婦など多くの人が利用しています。合理的配慮が行き届いた社会は、誰にとっても便利で快適な社会です。

ただし差別解消法には、不十分な点もたくさんあります。一つが、差別が起きた時の救済措置が弱いことです。救済措置については、地方自治体の条例で補完し、リードしていくような条例制定が望まれています。

兵庫県でも条例化

次に、佐藤聡さんは、兵庫県での差別禁止条例作りについて報告し、早急な成立を呼びかけました。日本で最初に差別禁止条例ができたのは、千葉県(2006年)です。その後、北海道(2009年)、岩手県(2010年)など、12の自治体で制定されています。特に、2011年には、障がい者基本法が改正され、「権利の主体」「社会モデル」「障がいの定義の拡大」といった大きな改革があり、これが各地の条例にも大きな影響を与えています。

差別解消法の附帯決議では、地方自治体による「上乗せ・横出し」が可能となっており、同法の不十分点を補い、より進んだ内容を取り入れることで、2016年に予定されている差別解消法の施行にもよい影響を与えることになります。

兵庫県では、2009年、県内の自立生活センターが集まり、条例作りの活動をスタートさせました。2カ月に1回の会議・勉強会を続け、何が差別か?わかりやすく伝えるために寸劇を行ったり、差別体験を話すワークショップを開催。先進地=千葉県・さいたま市・愛知県など条例作りに取り組んできた自治体の関係者やJDFの役員を招いて学習会を行ってきました。

2011年には、「障害者制度改革地域フォーラムin兵庫」を開催し、県内の団体が連携して条例作りを進めることに合意しています。ただし、団体毎に温度差があり、全体として盛り上がりがもてませんでした。

明石市の取り組みは、兵庫県の条例化が遅れているので、そのきっかけ作りとしても記念すべき催しです。これをスタートラインにして兵庫県条例作りに弾みをつけたいと思います。

解消法の精神を地域社会で生かすための具体的施策 明石市障害者施策担当課長 金政玉さん

編集部: 明石市の福祉総務課で仕事をすることになったいきさつは?

金:私は、2010年から内閣府・障害者制度改革担当室で5名の当事者を含む障がい者団体から入ったスタッフの一人として活動してきました。国連障がい者権利条約批准に向けて国内法を整備するという大切な仕事です。

全国の障がい者団体の活発な運動もあって、障がい者基本法改正(2011年)、総合支援法(2012年成立)、差別解消法(2013年6月成立)を経て、2013年12月、参院本会議で障がい者権利条約の批准が認められましたので、区切りとして今年3月末で退職しました。

ちょうど1年程前に、一連の制度改革や議論の積み重ね方に強い関心と共感を示されている泉市長が内閣府を訪問され、明石市でも改革を進めるための障がい者施策の専門職を採用したいとの希望を述べられました。

実際、昨年12月に、明石市が障がい者施策担当の専門職を公募していたので、応募し採用されました。採用条件は、@障がい当事者である、A政策立案の行政実務経験があることなどで、約30名が応募したそうです。

編:明石市での改革に向けたスタートとして、フォーラムが行われました。開催の目的や経緯を聞かせてください。

金:今回のフォーラムは、明石市差別解消条例作りに向けたキックオフとしての意味がありました。それだけに集まりが悪いと逆効果になるので、市内の関係団体をまわり、参加をお願いしました。私が明石市に着任したのが5月で、顔見知りもいませんでしたので、着任挨拶も兼ねて職員スタッフと一緒に回りました。

明石市には、「障がい者地域生活ケアネットワーク」(略称:135ネット)があります。市内約80団体が集まるネットワークなので、ここに参加する団体を中心に訪ねました。

当日は、282人の参加で、アンケートも100名以上の方が書いて頂きました。会場からの質問や意見もたくさん出(で)ましたので、スタートイベントとしては、成功だったと思います。アンケートでは、「日常の業務に追われて、しっかり差別について考える時間がとりにくい」ので、「今後も続けて欲しい」といった意見が寄せられています。

当事者主体で議論

編: 今後の取り組みは?

金:泉市長は記者会見で、@手話言語等障がい者コミュニケーション促進条例(仮称)と、A障がい者差別解消条例の成立をめざす、と表明しました。手話言語などコミュニケーション促進条例というのは、手話をろう者の言語として認め、自由な社会参加を進めることを拡大し、視覚障がい者・知的障がい者も含めた障がい者全体の意思疎通支援を行うための条例です。

6月議会で@の制定への取組みを表明しましたので、来年3月末の成立をめざして、具体的作業にはいります。

まず、条例検討委員会を作りで議論を開始しますが、この検討委員会は、@当事者を中心に、A手話通訳などの事業者団体、B有識者が委員となります。4回程度の検討委員会開催と同時に、当事者からのヒアリングもする予定です。

具体的には、手話通訳者・点訳者や音読者の育成や、現在明石市駅前の再開発が進んでいるのですが、古い図書館を建て替えるので、新図書館には、点字図書や活字の音声化装置などを揃えた「障がい者ライブラリー」を設置するということも検討できればと思います。

また、市が発行している様々なパンフレットを見直し、できるところからひらがな表記にしたりすることにも取組めればと思います。障がいによる様々な意思疎通の困難を補完する具体的な施策が求められています。

来年4月からは、1年間をかけて「障がい者差別解消条例」成立に向けた取り組みが始まります。2016年に差別解消法が施行されますので、このタイミングに合わせて条例も成立させたいと願っています。

差別解消条例は、「差別解消法」の不備な部分である「解決の仕組み」・「救済措置」を補うだけでなく、合理的配慮を現実化するための総合的な施策を推進したいと願っています。

条例を作るだけでなく、その精神を地域社会のなかに生(い)かすための具体的な施策が求められていると思っています。

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