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特集:万博記念公園周辺大再開発 ガンバ大阪新スタジアムショッピングゾーン バリアフリーで変わる吹田を考えよう!
吹田のバリアフリー・交通アクセスをめざす会

「エキスポランド跡地再開発事業」が、7月に着工しました。エンターテインメントとショッピングを融合させた大型複合施設を建設するもので、滑C遊館が手がける新しいタイプの水族館のほか、日本最大級の観覧車も計画されており、事業者である三井不動産は、「大阪の新たなランドマークを目指す」としています。

開発予定地南側では、ガンバ大阪の新スタジアム建設が進んでおり(来年秋完成予定)、万博記念公園周辺は、巨大な娯楽・商業地域として多くの人が集まる場となろうとしています。

まねき猫通信では、2月号で「吹田のバリアフリー・交通アクセスをめざす会」(代表者・赤尾広明・以下「吹田バリポツ」)の活動(かつどう)をレポートするとともに、吹田市議会で採択された請願の内容=「誰もが安心・安全に観戦・使用できるように、障がい当事者をまじえて、@継続的に協議の場を設けること。A設計段階や建設段階で当事者が参画できる場を作ること。B完成後のスパイラルアップを求めた」=を紹介しながら、バリアフリーのモデル事業として、当事者参加の重要性を訴えました。

「吹田バリポツ」は、その後も障がい当事者として事業者側と協議を続けるとともに、2回のシンポジウムなどを開(ひら)いて運動を進めてきました。その後の経過や、見えてきた問題などを、吹田バリポツ代表・赤尾広明さんと副代表の福西義信さんに聞きました。(文責・編集部)

災害に備えスロープの設置を

編集部:三井不動産との協議が、不調になっていると聞きました。経過と理由を聞かせてください。

赤尾:この巨大再開発事業をバリアフリーという観点で見た場合、大きな問題が含まれています。まず、駅を降りてメインゲートからショッピング街に行くために2つの道路が計画されているのですが、両方とも階段があって、車いす利用者は通れません。エレベーターが設置されますが、止まった時の対策がないのです。

地震をはじめ大規模災害時にエレベーターが止まることは、よくあることです。緊急時には、群衆が殺到し大混乱となりますし、火事が発生すれば逃げ場を失うことになります。こうした非常時に備えるためにも、スロープ設置を要望しました。

しかし三井不動産の担当者は、「個人的見解」としながら、スロープ設置には100bの用地が必要で、その分商業スペースが狭くなるため、「設計変更は不可能」との回答でした。その代わり「職員の災害訓練を重ねて優先的に安全を確保する」としていますが、混乱した非常時に車いすが優先して避難できる保証はありません。また、軽い車いすなら抱えて階段を降りられるでしょうが、私のように重いストレッチャーは無理です。急傾斜でも、幅が狭くてもいいので、自力で避難できるよう最低1つはスロープが必要なのです。しかし三井不動産は、この件について「再協議はしない」と通告し、協議を打ち切ろうとしています。結局、安全よりビジネスを優先する姿勢だと思いました。吹田のバリアフリー・交通アクセスをめざす会

開発者の責任行政の責任

さらに厄介なのは、開発エリアのうち商業施設は三井不動産が直接、建設・運営しますが、水族館は滑C遊館、観覧車や映画館は別の事業者(未定)というふうに、娯楽施設エリアは事業者が別であることです。

例えば、日本最大規模となる観覧車について、車いすも利用できるよう三井不動産に要望したのですが、「事業者に伝えますが、協議は当該の事業者とやってください」との回答でした。天保山(大阪市港区)や栄町(名古屋市)にある観覧車は、車いすが乗れる仕様になっていますので、エキスポランドもバリアフリーにして欲しいのですが、協議すらできない現状です。

福西:映画館についても同様です。最近のシネコンは、車いす席が用意されるようになりましたが、劇場の端っこに限られます。映画館の通路は狭いので、スロープのみの劇場でも、中央に行けることは稀です。また、出入口の位置によっては、最前列か最後尾になります。後ろはまだしも、最前列で端っことなると、いささか悲惨な観賞となります。設計段階で当事者の意見を聞いて欲しいと思います。

現状では、交渉窓口が増えていくし、設計段階で協議を行わないといけないので、結果的に使いづらい施設が完成してしまいそうです。三井不動産には、開発主体としての責任がありますし、吹田市も「住民の防災・安全」という観点から、事業者に指導して欲しいと思います。

ガンバ大阪新スタジアム

赤尾:ガンバ大阪・新スタジアムは、2013年12月に工事が始まりました。完成後は吹田市に寄付され、「吹田市立スタジアム」(仮称)として来年秋から利用が始まります。Jリーグのサッカー場としては小規模ですが、災害時防災拠点としても利用されます。

私たちは、建設募金団体と協議を重ねた結果、車いすスペースがメインゲートのある3階最前列に限定されていた点は改善され、5階と2階後方にも車いす席が設けられました。しかし1階席については、「構造上困難」としています。3階から1階への移動が、30度という急傾斜で、「スロープを付けても無理」という理由です。

しかし、1階には救急車が出入りしたり、物資を運び込むための通路があるはずです。それを利用して1階の観戦席に誘導するルートを確保することが、構造上無理とは思えません。

私たちは特別扱いを求めているわけではありません。他のサッカーファンと同じように、観戦場所を選択できるよう要望しているだけです。「1階は、ボールが飛んできて危険」という声も聞きますが、ファンとしては臨場感を味わえるので本望ですし、怪我をしたとしても自己責任だと思っています。

にも、災害時の避難通路の確保、エレベーターに人が殺到した場合の対策などの問題は残っています。ただし工事が進んでおり、ハード面での改良の余地は、少ないと思っています。今後は、案内板などソフト面での改善を求めていきます。4万人の観衆が気持ちよく観戦し、混乱なく移動し、安全・迅速に避難できるのか?課題は山積しています。

「普通に生きたい」

福西:協議方法自体の問題もあります。できあがっている設計仕様を改良するのは、限界があります。デザイン段階から意見交換をしたいと願っています。障がい者が何に困っているのか?

ユニバーサルデザインとは何なのか?協議を通じて考えて欲しいからです。

三井不動産との協議には、設計担当者も出席していました。ガンバ大阪もそうした対応が欲しいところです。というのも協議内容が実際の工事に反映されているとは思えないからです。

赤尾:車いす席は合計300席で、内50席が値段の高い良席です。せめて良席だけでも、臨場感を味わえる配慮を求めます。

福西:ガンバ大阪スタジアムにしてもエキスポランド再開発にしても、協議になっていないという問題点があります。要望を伝えても、返ってくるのは進捗状況の報告だけで、なぜできないのか?どうすればできるのか?を話し合う場になっていないのです。本当の意味で参画はできていないと感じています。

誰でも参加でき、想定できる様々な問題を出し合い、解決策を見つけるような公開の説明会も必要です。こうした説明会こそ吹田市役所が、率先して開催して欲しいと思います。

編集部:公共施設や交通機関のように生活上不可欠な施設と違い、娯楽施設となると、別の説得が必要になると思いますが。

赤尾:ユニバーサルデザインを語る場合、障がい者権利条約やバリアフリー法を持ち出して、法律論で説得する場合が多いと思いますが、もっと実際の生活レベルの問題なのです。

誰でも普通に行く居酒屋や娯楽の場に、行きたくても行けない人がいることを想像して欲しいのです。普通の人がやってることを、自分もやりたい―そんなシンプルな欲求なのです。それを入口でシャットアウトされると、「なぜ?」と問(と)いたくなります。

その際によく出てくるのが「経済性=コスト」の問題です。コストやビジネスという観点にしても、弱者に優しい配慮やホスピタリティを提供することで来場客が増え、利益にもつながっていくという発想に切り替えて欲しいと思います。

当事者の側にも「諦め」があります。平日昼間に映画館に行って貸し切り状態なのに、席は最前列の端っこ。これでも障がい者だから「しょうがないやん」と黙っています。これでは現状は変わりません。

法律論の前に、「普通の人として生きたい」との思いを尊重し、検討を重ねて一緒に解決策を見いだそうとする姿勢こそ、バリアフリーの精神だと思います。両施設とも来年の秋に開業予定です。特に防災・安全面は、犠牲者(ぎせいしゃ)が出てからでは遅いので、綿密な検討を期待します。

サッカー好き車いす1000人委員会

7月18日、吹田バリポツは、ユニバーサルデザインの街作りに向けて、シンポジウムを開催しました。内容は、@関西福祉科学大学の三星昭宏教授に「バリアフリー基本構想の到達点と課題」というテーマで基調講演をして頂き、Aバリポツの活動を報告、B今後の取り組みについて議論しました。

三星さんから、新スタジアムのユニバーサルデザイン化について、おもしろい提案を頂きました。サッカー好きの市民に働きかけて、協同するというものです。@サッカー好きの車いす利用者が全国から集まって「1000人委員会」を作り、提言をする、A吹田にある少年チームやアマチュアのサッカー協会に声をかけて協同する、B吹田青年会議所が地域活性化のためにスタジアム建設募金団体と協議を続けているようなので、連携を模索するなどです。

.サッカー好きの同好の士として、「どんなスタジアムであって欲しいのか?」を語りかければ、きっと理解を得られるでしょうし、事業者も耳を傾けやすいと思います。

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