特集:当事者の声で地域を変える!私たちぬきに私たちのことを決めないで〜すいた障害当事者連絡会 新春座談会〜
吹田では、手帳を持つ障がい者が約1万8000人生活しています。ところが、実質的に当事者が意思決定し、運営するような当事者団体はないのが実情です。福祉施策を議論する審議会や協議会においても、当事者が委員となり発言する仕組みもほとんどありません。障害者総合支援法に基づく自立支援協議会に当事者部会はありませんし、会議を主導する事務局は行政が担い、障がい者団体の代表もほとんどが支援者で占められています。
この現状を変えるために、昨年11月、すいた障害当事者連絡会が発足しました。メンバーは障がい当事者に限定し、様々な生活上の情報交換や茶話会などから始めて、当事者の声を直接発信し、福祉施策にも反映させようとする試みです。
同連絡会メンバー(宇都雪人さん、福西義信さん、細田捷代さん)に集まって頂き、新年の抱負を語って頂きました。(文責・編集部)
吹田を交通バリアフリーの街に
福西:これまで、「吹田のバリアフリー・交通アクセスをめざす会」で活動してきましたが、道路のバリアフリーに取り組みたいと思っています。現在の道路は車優先で、歩道の整備が遅れています。歩道が途中で途切れたり、交差点に段差があって渡れなかったりします。車いすで動くとよくわかりますが、普段使う生活道路も高低差があり段差だらけで使いにくい状態です。
これまでは「法律で決められた基準を守らせる」というやり方が一般的だったのですが、当事者が声をあげることによって、使いにくいところを具体的に指摘し、使い勝手のいい道路に変えることができます。
また、計画段階から当事者が参画することにより、後で変更するより効率的にバリアフリーを実現することができます。
細田:自力で歩ける時は、道路のバリアフリーなんて気にしていなかったのですが、車いすに乗り始めてみると段差だらけで、どこへも行けない現実に直面しました。これが交通バリアフリー運動に入るきっかけです。運動をしても私たちの声を行政に届けるのは困難でした。問題を指摘しても聞くだけで、現実には変わらないからです。
重点地区を設定して「連続した移動経路を確保し、切れ目のない一体的なエリアとしてバリアフリーを進めるため」としたバリアフリー基本構想にしても、実際に車いすで走ってみると、そうはなっていないのです。
宇都:これまでも「当事者参画」は言われてきましたが、作業所などは、関係者や支援者が中心になって運営されているのが現実です。昨年ようやく障害者権利条約が批准されましたが、そのスローガンは「私たち抜きに私たちのことを決めないで」です。このすばらしい理念をあらゆる場面で当事者が参画し実践するために、連絡会は結成されました。吹田では初めての取り組みだと思います。
障がい種別を越えた当事者組織を
宇都:交通バリアフリーは重要テーマですが、福祉サービスの問題、合理的配慮の不提供など、あらゆる場面で当事者の声を発信し、当事者に関係することについては当事者の声を出発点として物事が進むという原則を打ち立てたいと思います。
自立支援協議会のなかに当事者部会を作ることも重要です。現状の自立支援協議会の当事者委員は、赤尾さん(連絡会メンバー)だけです。しかも、相談支援部会・工賃検討部会など各専門部会に当事者は誰もいません。
スタートしたばかりなので、メンバーも少ないのですが、障がい種別を越えて、様々な当事者があつまれるような枠組みを作りたいと思っています。当面は、メンバーの拡大が重要です。市報で紹介してもらえれば、在宅障がい者にも連絡会の存在を知ってもらうことができます。「何でも語ろう会」のような生活上の細々とした話から、日常の不安や悩みを語り合う場を作っていきたいと思っています。具体的な問題を出し合って共有し、行政の支援が必要ならみんなで交渉するという活動です。
生活の問題は、公的制度の問題もあれば、社会的なバリアもあります。昔に比べて福祉サービスは整ってきましたし、親が若い間は、制度を使いながら育てていくことはできます。しかし、親も障がい当事者も高齢化したときに、どういう制度を使ってどのように支えていくのか? 課題は山積しています。
福西:吹田市では、4つの開発プロジェクトが進行しています。@ガンバ新スタジアム、Aエキスポランド跡地の商業複合施設、Bおおさか東線JR西吹田駅、CJR岸辺駅北口の国立循環器病研究センターと吹田市民病院の移転プロジェクトです。これら新施設に関しては当然、バリアフリーなユニバーサルデザインにしなければなりませんが、バリアフリー法の基準を満たしていれば十分かというと、違います。実際に使いづらい施設はたくさんあります。
先日、大阪モノレールの阪大病院前駅のバリアフリー調査を行いました。同駅は大阪府のまちづくり条例の適合駅で、駅員の介助なしで乗降できるのはすばらしいのですが、エレベーターが小さくて、車いすが1台乗ると他は誰も乗れないのです。ストレッチャー型は乗降も無理です。確かに基準は満たしているのですが、こうした点を指摘できるのが当事者だと思います。
宇都:鉄道駅などハード面は、ある程度バリアフリーでユニバーサルデザインが実現してきていますが、情報保障という面がとても遅れています。英語や韓国語や中国語には対応しているのに、ルビが必要な障がい者への配慮がほとんどなされていません。私は身体障がいですが、視覚障がい者や知的障がい者にとってのバリアが何か?は、聞いてみないとわからないので、障がい種別を越えて交流することは、とても重要です。
福西:2020年の東京オリンピック開催までに、1日3000人以上の乗降がある駅については、バリアフリー整備をしていくことになっています。しかし、現在の基準を適用するだけでは、不十分なものにしかなりません。20年先くらいの未来を見据えた構想を実現するためにも当事者の声は欠かせません。
宇都:2009年、内閣府に障害者制度改革推進会議が設置されましたが、半数の委員が障がい当事者や関係者でした。こうした審議モデルが作られ、実績を上げているのですから、地域でも当事者が意思決定の場で主要な役割を担うような仕組み作りが求められています。
国連の障害者権利条約では、「他の者との平等を基礎とする」という立派な理念が謳われています。理念実現に向けて当事者の組織づくりをしていきたいと思います。
分けない教育で心のバリアフリーを
細田:物質的バリアフリーも重要ですが、心のバリアをなくすことが、やはり重要です。私の親は、私を支援学校(養護学校)ではなく普通校に入学させました。地域の子どもたちと一緒に育つことで、地域で生きていけるようにするためだったのです。最初はいじめもありましたが、仲良くなった友達もたくさんいます。学校の建物は、階段や段差でバリアだらけでも、手助けしてくれるクラスメートがいれば、学校生活は送れるのです。こうした経験と人間関係があるから地域で生きてこられたのだと思います。
障がいのない人にとっても、家族や身近に障がい者がいなかった人が、大人になってから障がいを理解するのは、困難です。その点、子どもはそれを素直に受け入れて、自然に接する術を身につけます。
幼年期を支援学校(養護学校)だけで過ごした子どもが、卒業していきなり地域で暮らすのは無理があります。「障がいがあるから特別支援学校へ」というのは、地域との関係が薄くなり、長い目で見るとデメリットが大きいと、私は思います。心のバリアフリーを進めるうえでも、地域の学校で学び、地域で働くのが基本だと思います。
「すいた障害当事者連絡会」発足「何でも語ろう会」にご参加を!
「当事者自らが声を上げなければ何も変わらない」という思いを共通認識に、昨年11月に当事者5人で「すいた障害当事者連絡会」を立ち上げました。
障害者権利条約の運動のスローガンでもある“Nothing about us without us”(私たち抜きに私たちことを決めないで)を理念に、身体障がい者(児)、知的障がい者(児)、精神障がい者、難病患者の人権を尊重し、全ての障がい者(児)にとって、吹田のまちが「差別のない共に生きる社会」で安心、安全に暮らせるまちとなるように、人権啓発、福祉サービスの拡充、バリアフリー化に向けた取り組みを目的として、社会的障壁、差別、合理的配慮の不提供など、課題や問題に対して、「他の者との平等を基礎」に、障害者権利条約を活かした活動を行っていきたいと思います。
同時に、日常の悩み、不安など障がい者同志が自由に気楽に話し、意見を言い合える場を設け、皆で解決、提案できるような「何でも語ろう会」を5月ごろに開きたいと思いますので、ご賛同頂ける障がい者の方はご一報頂ければ幸いです。
今後とも、私たちの活動にご支援、ご協力賜りますようよろしくお願い致します。
連絡先:06-6317-5598(ぷくぷくの会/担当:宇都・細田)06-4860-5850(b-free/担当:池田・赤尾)
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