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まねき猫通信152ぴきめ(2015年3月2日発行)WEB版

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トリの眼・ムシの目・ニャンコの目(巻頭コラム)

 武満徹・作曲、谷川俊太郎・作詞の名曲と言えば、『死んだ男の残したものは』『うたうだけ』『MIYOTA』『見えない子ども』『恋のかくれんぼ』などが思い浮かぶが、『三月のうた』には特異な印象が纏う。「わたしは花を捨てて行く/ものみな芽吹く三月に/わたしは道を捨てて行く/子等のかけだす三月に/わたしは愛だけを抱いて行く/よろこびとおそれとおまえ/おまえの笑う三月に」

花と道を捨てて愛だけを抱き、「わたし」はどこへ行こうとするのか? 冬と春の汽水域とでもいうべき3月に、喜びと恐れは「おまえ」と並列で、しかも「おまえ」は笑っている。谷川の詠う「闇」を、武満がバラードで包み込んだこの楽曲の、何という哀愁、如何に喩えるべき清爽!

2011年3月11日、すべてが揺さぶられ、誰もが絶叫したはずだ。あの日から、この国の「闇」は深まるばかりで、漆黒に彩られた風景が此処彼処に広がってしまった。震災と原発事故と米軍基地、差別と貧困と戦争の危機…課題が山積みのまま、人倫は限りなく劣化し、反知性の嵐に吹き晒される4年目の3月には、捨てるに値する花も道すら存在せず、かけ出す子等の姿さえも見あたらないのだが、「わたし」は「おまえ」を凝視し、その「嗤笑」を聞き逃しはしない。(パギ)

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