まねき猫通信184ひきめ(2017年11月11日発行)WEB版
トリの眼・ムシの目・ニャンコの目(巻頭コラム)
第60回江戸川乱歩賞受賞作・下村敦史『闇に香る嘘』を一気に読んだ。読了後、物語が頭の中を何度も何度も、何事かに逡巡するかのように回転し、その展開を反芻した。本作品の下敷きには「中国残留孤児問題」がある。そして「全盲」が作品全体の終始一貫を覆う。下村敦史が描いた障害者像は『白の闇』(ジョゼ・サラマーゴ/1998年ノーベル文学賞)から抽出され、かつ綿密に洗練された印象を受けた
「常闇」に生きざるを得なくなった主人公の〈言動・思考・苦悩・葛藤〉の逐一が読者に憑依してきて、そしてそれが「謎解き」の因果に繋がっていくのだ。作者の下村自身が視覚障害者か?と訝ったほどで、その取材力は〈常軌を逸する〉との過言を以て絶賛する以外ない
昔、白土三平『カムイ伝』の惹句に「ストーリーは小説を越え、ビジュアルは映画を越えた」という秀逸があった。それに擬えて、『闇に香る嘘』の「構想力は『三たびの海峡』(帚木蓬生)を越え、歴史性は『エトロフ発緊急電』(佐々木 譲)を凌ぎ、説得力は『テロリストのパラソル』(藤原伊織)に勝とも劣らず、結末の意外性は『砂の器』(松本清張)を遥かに凌駕し、そして、筆力は『李歐』(高村薫)に肉薄している」と記しておこう。ご一読を!(パギ)
目次
- 特集:10/10 アクセス関西ネットワーク集会 in きょうと
- 誰もが移動しやすいまちを目指して(PDF版に掲載)
- 当事者リレーエッセイ:怒りと混乱の退職から新事業所へ 轟広志(本紙のみ掲載)
- メディアアイ155:野党分散が与党を圧勝させた「反自民」を支える運動を 石塚直人(本紙のみ掲載)
- 食べものあれこれ ぷくぷくショップ(本紙のみ掲載)
- ヨリの風来坊日記G 頼尊恒信(本紙のみ掲載)
- とんでもない一日になった衆議院選挙投票日
- 障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク全国大会設立20周年記念集会に参加して(本紙のみ掲載)
- 地域の中で生き活動した母=香代子
- 豊中市障害者就労雇用支援センター事務局長 入部正也