日韓座談会

２ひきめ（2002年6月）
特集・日韓関係について考えてみよう

座談会(ざだんかい)・日本(にほん)×在日(ざいにち)コリアン×韓国(かんこく)
ワールドカップ日韓(にっかん)共催(きょうさい)
・・・で、どうなん？

　日韓(にっかん)共催(きょうさい)で行(おこ)なわれるサッカー・ワールドカップ。メディアでも韓国(かんこく)や在日(ざいにち)コリアンがよく取(と)り上(あ)げられ、大(おお)いに盛(も)り上(あ)がっています。でも、日韓(にっかん)関係(かんけい)、在日(ざいにち)コリアンの問題(もんだい)、これからの関係(かんけい)について、本当(ほんとう)のところどう思(おも)ってる？　ワールドカップ開催(かいさい)間近(まぢか)の五月(ごがつ)初旬(しょじゅん)、一〇代(だい)、二〇代(だい)のみなさんにざっくばらんに話(はな)していただきました。まずは、最近(さいきん)の状況(じょうきょう)をみて感(かん)じていることから・・・。

　◎参加者(さんかしゃ)（敬称略(けいしょうりゃく)、五〇音順(おんじゅん)）　
川人(かわひと)理恵(りえ)(19):京都(きょうと)精華(せいか)大学(だいがく)二(に)回生(かいせい)。高校(こうこう)時代(じだい)は部落(ぶらく)問題(もんだい)研究部(けんきゅうぶ)、現在(げんざい)は立命館(りつめいかん)大学(だいがく)の沖縄(おきなわ)研究会(けんきゅうかい)で活動(かつどう)。
金廣海(きむくぁんへ)(29):在日(ざいにち)コリアン三世(さんせい)。在日(ざいにち)韓国(かんこく)青年(せいねん)連合(れんごう)大阪(おおさか)地方(ちほう)協議会(きょうぎかい)副(ふく)代表(だいひょう)。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　※文中表記(ぶんちゅうひょうき):廣海(くぁんへ)　
金健希(きむこんふぃ)(28):在日(ざいにち)コリアン三世(さんせい)。韓国籍(かんこくせき)。公務員(こうむいん)。　　※文中表記(ぶんちゅうひょうき):健希(こんふぃ)
澄田(すみだ)憲親(のりちか)(28):日本人(にほんじん)。大学(だいがく)時代(じだい)、在日(ざいにち)朝鮮人(ちょうせんじん)教育(きょういく)研究会(けんきゅうかい)に所属(しょぞく)。
高島(たかしま)藍(あい)(21):大阪(おおさか)産業(さんぎょう)大学(だいがく)四(よん)回生(かいせい)。在日(ざいにち)コリアン四世(よんせい)。生(う)まれたときから日本(にほん)国籍(こくせき)。
進行(しんこう):編集部(へんしゅうぶ)

　ワールドカップ日韓(にっかん)共催(きょうさい)の今(いま)　
健希(こんふぃ)　今日(きょう)電車(でんしゃ)で来(く)るときにも『いま、韓国(かんこく)が熱(あつ)い』みたいな吊(つ)り広告(こうこく)があって、韓国(かんこく)と日本(にほん)の距離(きょり)が以前(いぜん)より近(ちか)づいてきてるなと感(かん)じています。でも、情報量(じょうほうりょう)は増(ふ)えてるけど、実際(じっさい)に接(せっ)してみたらお互(たが)いがもつ情報(じょうほう)や経験(けいけん)の違(ちが)いにびっくりするやろなあと思(おも)います。私(わたし)が韓国(かんこく)に行(い)ったとき、そういう経験(けいけん)をしたから。
廣海(くぁんへ)　ワールドカップをきっかけに交流(こうりゅう)が始(はじ)まっているところもありますね。表面的(ひょうめんてき)な交流(こうりゅう)だけでは日韓(にっかん)の間(あいだ)にある解決(かいけつ)しなければならない問題(もんだい)はなかなか見(み)えてこないという面(めん)はたしかにありますが、人(ひと)と人(ひと)との交流(こうりゅう)が基本的(きほんてき)には大事(だいじ)という意味(いみ)ではいい契機(けいき)になっていると思(おも)います。先日(せんじつ)もテレビで、俳優(はいゆう)の伊原(いはら)剛(つよし)志(つよし)さんが在日(ざいにち)コリアンであることを明(あ)かして自(みずか)らの歴史(れきし)を紐解(ひもと)いていくという番組(ばんぐみ)をやっていましたが、このように、これまで見(み)えてこなかった問題(もんだい)が見(み)えてくるという効果(こうか)は少(すこ)し期待(きたい)できるのではないでしょうか。芸能人(げいのうじん)には在日(ざいにち)コリアンがとても多(おお)いんですが、みんな本名(ほんみょう)宣言(せんげん)してくれたらなと思(おも)いながらテレビを見(み)ているんですけども（笑(わらい)）。
澄田(すみだ)　ぼくはつい数日前(すうじつまえ)まで仕事(しごと)で韓国(かんこく)に行(い)ってたんですけど、韓国(かんこく)国内(こくない)での世代間(せだいかん)ギャップをものすごく感(かん)じました。過去(かこ)の問題(もんだい)についてよく知(し)らないとか、辛(つら)い経験(けいけん)をした年配(ねんぱい)の人(ひと)に共感(きょうかん)できない若者(わかもの)がたくさんいる。同(おな)じような世代間(せだいかん)ギャップは日本(にほん)にもあって、今回(こんかい)ワールドカップで歩(あゆ)み寄(よ)ろうとしているのは両国(りょうこく)のその若(わか)い世代(せだい)で、お互(たが)い上(うえ)の世代(せだい)は置(お)き去(さ)りにされている。それはごっついしんどいなと思(おも)います。世代間(せだいかん)、日本(にほん)と韓国(かんこく)、在日(ざいにち)と日本人(にほんじん)――いろんなギャップがぐちゃぐちゃなままでの「ワールドカップ日韓(にっかん)共催(きょうさい)」だから、情報(じょうほう)や共感(きょうかん)のレベルでの矛盾(むじゅん)が出(で)てきて、ものすごく波(なみ)が荒(あら)いときやなと感(かん)じますね。
高島(たかしま)　世代間(せだいかん)ギャップというと、私(わたし)は母親(ははおや)が二世(にせい)、父親(ちちおや)が三世(さんせい)なのでかなり早(はや)い世代(せだい)の四世(よんせい)なんですが、生(う)まれたときから日本(にほん)国籍(こくせき)で、「日本人(にほんじん)」として育(そだ)てられてきてコミュニティにもいなかったから、上(うえ)の世代(せだい)とのギャップがどういうものかさえ実感(じっかん)できないんです。

歴史(れきし)の「溝(みぞ)」に橋(はし)を架(か)ける　
高島(たかしま)　私(わたし)は歴史(れきし)問題(もんだい)ってすごく深(ふか)い「溝(みぞ)」で、そこに橋(はし)を架(か)けることはできても埋(う)めることはできないと思(おも)ってます。日本(にほん)はお金(かね)のためにワールドカップに乗(の)っていこうとしているから、ワールドカップが終(お)わると日韓(にっかん)関係(かんけい)も離(はな)れてしまうかもしれない。一方(いっぽう)で社会(しゃかい)が右傾化(うけいか)しつつあるから、根本的(こんぽんてき)な問題(もんだい)を残(のこ)したままワールドカップが進(すす)められることに大(おお)きな危惧感(きぐかん)をもっています。
健希(こんふぃ)　その「溝(みぞ)」にどんな橋(はし)を架(か)けるかがすごく大事(だいじ)やと思(おも)う。これまでは、加害(かがい)の側(がわ)は過去(かこ)のことを責(せ)められて逆(ぎゃく)に反発(はんぱつ)をおぼえ、被害(ひがい)を受(う)けた側(がわ)は理解(りかい)されないことで虚(むな)しくなる。そういう関係(かんけい)が多(おお)かったように思(おも)うけど、双方(そうほう)ともにこれからの関係(かんけい)を考(かんが)える人(ひと)が増(ふ)えてきている。ただ、そこで歴史(れきし)という過去(かこ)の「溝(みぞ)」を見(み)ずにいることはできないのに、未来(みらい)ばかり見(み)て橋(はし)を架(か)けようとするから不自然(ふしぜん)になるねんな。
廣海(くぁんへ)　たしかに過去(かこ)の問題(もんだい)にしっかり目(め)を向(む)けたうえで、これからのことを話(はな)せる関係(かんけい)が作(つく)れるかどうかが課題(かだい)になっていますね。たとえば韓青連(かんせいれん)では「日本(にほん)-在日(ざいにち)-韓国(かんこく)ユースフォーラム」という活動(かつどう)を毎年(まいとし)やっているんですが、そこではぼくら在日(ざいにち)コリアンが橋渡(はしわた)し的(てき)存在(そんざい)になり、日本(にほん)・韓国(かんこく)の青年(せいねん)たちとともに学(まな)んだり交流(こうりゅう)したりしています。単(たん)に仲良(なかよ)くなるだけじゃなくて、お互(たが)いの持(も)っているものをさらけ出(だ)し、日韓(にっかん)の間(あいだ)にある問題(もんだい)を明確(めいかく)にしながら関係(かんけい)を作(つく)っていきたいですね。

自(みずか)らを知(し)ること、生(い)きること　
川人(かわひと)　私(わたし)は今(いま)「沖縄(おきなわ)研究会(けんきゅうかい)」というサークルで沖縄(おきなわ)の歴史(れきし)を勉強(べんきょう)したり、大阪(おおさか)の大正区(たいしょうく)（注(ちゅう)・沖縄(おきなわ)出身者(しゅっしんしゃ)が多(おお)い）に行(い)って、若(わか)い頃(ころ)、沖縄(おきなわ)出身(しゅっしん)を隠(かく)していたという人(ひと)の話(はなし)や、差別(さべつ)を受(う)けて「沖縄人(おきなわじん)としての誇(ほこ)り」とは何(なに)かを考(かんが)えてきた体験(たいけん)を聴(き)いたりしています。だけどそれを自分(じぶん)に置(お)き換(か)えてみたら、私(わたし)は「日本人(にほんじん)としての誇(ほこ)り」なんて考(かんが)えたこともなかったし、考(かんが)えたところで何(なに)になるんやろうという気(き)もする。でも、沖縄(おきなわ)だけじゃなく在日(ざいにち)の問題(もんだい)にしても、自分(じぶん)は日本人(にほんじん)としてどう生(い)きるかというのは大(おお)きいなと感(かん)じます。
廣海(くぁんへ)　ぼくは在日(ざいにち)コリアンが誇(ほこ)りをもたなければならないとまでは言(い)わないけれども、少(すく)なくとも自分(じぶん)が在日(ざいにち)コリアンであるということを肯定的(こうていてき)に受(う)けとめ、あるいは積極的(せっきょくてき)に活(い)かす思想(しそう)と行動(こうどう)が必要(ひつよう)だと思(おも)っています。そのためには自分(じぶん)自身(じしん)をよく知(し)る必要(ひつよう)がある。在日(ざいにち)コリアンは今(いま)でもなかなか自分(じぶん)の立場(たちば)を肯定的(こうていてき)に受(う)けとめにくい状況(じょうきょう)にあるけども、それは○○人(じん)とか、あるいは部落(ぶらく)出身(しゅっしん)とか障害(しょうがい)があるという理由(りゆう)で優劣(ゆうれつ)をつけてきたこの社会(しゃかい)が問題(もんだい)なんです。でも、在日(ざいにち)コリアン自身(じしん)がそのルーツや今(いま)の社会(しゃかい)状況(じょうきょう)を受(う)けとめることなしには、現状(げんじょう)をどう変(か)えていくかも見(み)えてこないんですね。日本人(にほんじん)でも、「誇(ほこ)り」というよりも、自(みずか)らの歴史(れきし)を知(し)ったうえで自分(じぶん)自身(じしん)がこれからどう生(い)き、どんな社会(しゃかい)をつくっていくかを考(かんが)えることが大事(だいじ)じゃないかな。

差別(さべつ)をなくすための「行動(こうどう)」　
高島(たかしま)　今日(きょう)思(おも)いついたことなんですけど、人(ひと)の考(かんが)え方(かた)をいきなり変(か)えることや差別(さべつ)をなくすことはできないけども、差別(さべつ)を支持(しじ)しない、被(ひ)差別者(さべつしゃ)を受(う)け容(い)れるという立場(たちば)を表明(ひょうめい)する人(ひと)が増(ふ)えていけば、被(ひ)差別者(さべつしゃ)がいやすい環境(かんきょう)ができるのではないか。周(まわ)りに流(なが)されて「問題(もんだい)だ」とは言(い)えなくても、疑問(ぎもん)に思(おも)う人(ひと)が少(すこ)しずつ表明(ひょうめい)することはできると思(おも)うんです。
廣海(くぁんへ)　無関心(むかんしん)ゆえに「自分(じぶん)は差別(さべつ)はしない」と言(い)える人(ひと)は多(おお)いよね。でも、本当(ほんとう)に受(う)け容(い)れるというのは、差別(さべつ)する人(ひと)に怒(いか)りを持(も)ったり、それを変(か)えるために何(なに)か行動(こうどう)できることなんじゃないかな。
健希(こんふぃ)　たとえば、いじめられてる人(ひと)がいるときに、「私(わたし)はいじめる側(がわ)には立(た)たない。でも何(なに)も言(い)えないよ」というのでは、結果的(けっかてき)にいじめを支持(しじ)していることになるやん。行動(こうどう)というのは、昔(むかし)みたいにヘルメットかぶって「おーっ！」ってやるとかいうのでなくても（笑(わらい)）、たとえばその場(ば)で「おかしい」と言(い)えるとか。疑問(ぎもん)に思(おも)うけどなにも言(い)えないというのは行動(こうどう)するまでの中継(ちゅうけい)地点(ちてん)であって、ずっとそこに安住(あんじゅう)してたらちょっとずるい気(き)がする。行動(こうどう)するには勇気(ゆうき)がいるのは分(わ)かるけど。
高島(たかしま)　うーん…。人間(にんげん)誰(だれ)でも怖(こわ)いからすぐには行動(こうどう)に移(うつ)せなくても、まず表明(ひょうめい)をすることで別(べつ)のものが自分(じぶん)のなかに芽生(めば)えてくるかもしれないし、新(あたら)しい出会(であ)いやつながりが生(う)まれるかもしれない。そこには可能性(かのうせい)がいっぱいあると思(おも)うんです。
澄田(すみだ)　そういう表明(ひょうめい)をしてたら、差別(さべつ)の現場(げんば)に直面(ちょくめん)したときにすごく問(と)われてくるでしょうね。その場(ば)での緊張感(きんちょうかん)は全然(ぜんぜん)違(ちが)うと思(おも)う。ぼくは小(ちい)さい頃(ころ)から信仰(しんこう)をもって育(そだ)ってきたので、友達(ともだち)との会話(かいわ)のなかで「あいつらキモいなぁ。宗教(しゅうきょう)みたいや」みたいな話(はなし)が出(で)ても、何(なに)も言(い)えないまま関係(かんけい)を切(き)ってた時期(じき)がありました。でもあるとき、そういう話(はなし)には反対(はんたい)すると表明(ひょうめい)していた友(とも)だちが「おかしいんちゃうか」と言(い)ってくれて、ものすごくうれしかったんです。だから、傍観者(ぼうかんしゃ)から抜(ぬ)け出(だ)す第一歩(だいいっぽ)としての表明(ひょうめい)というのもあるなと思(おも)う。
健希(こんふぃ)　そういうとき、「自分(じぶん)も信仰(しんこう)をもっていると思(おも)われたらどうしよう」という、自分(じぶん)のなかに信仰(しんこう)をもっている人(ひと)に対(たい)する差別(さべつ)意識(いしき)がどこかにあると、「おかしい」と言(い)いにくくなるんちゃうかな。他(ほか)の差別(さべつ)とか偏見(へんけん)にも言(い)えることやけど「私(わたし)はちゃうねんけど…」って前置(まえお)きつけないとおかしいって言(い)いにくいとか。

表現(ひょうげん)のかたちと気持(きも)ち　
川人(かわひと)　でも、意見(いけん)を表明(ひょうめい)するというのも場合(ばあい)によったら強制(きょうせい)になると思(おも)う。差別(さべつ)はおかしいと思(おも)っていても、「何(なに)か言(い)わなくてはいけない」となるとしんどくなる。私(わたし)自身(じしん)、高校(こうこう)で部落(ぶらく)問題(もんだい)研究部(けんきゅうぶ)に入(はい)っていたとき、友(とも)だちに対(たい)して表明(ひょうめい)せなあかんという気持(きも)ちが強(つよ)い一方(いっぽう)で、身近(みぢか)だからこそ表明(ひょうめい)しにくいというのもあったし。
　部落(ぶらく)研(けん)に部落(ぶらく)出身(しゅっしん)の先輩(せんぱい)がいたんやけど、ほとんど活動(かつどう)に参加(さんか)してなくて私(わたし)はずっと腹立(はらた)っててんね。私(わたし)は、その先輩(せんぱい)から「何部(なにぶ)に入(はい)ってると訊(き)かれたらどう答(こた)えてる？」と訊(き)かれたとき、なんでそんなこと訊(き)くのかわからんかったし、立場(たちば)宣言(せんげん)（注(ちゅう)・みんなの前(まえ)で部落(ぶらく)出身(しゅっしん)であると宣言(せんげん)すること）をしたとき泣(な)いてしまったという話(はなし)を聞(き)いたときも深(ふか)く考(かんが)えずに流(なが)してしまった。でも後(あと)になって、先輩(せんぱい)は部落(ぶらく)出身(しゅっしん)やからこそ部(ぶ)に出(で)入(い)りしにくかったり部落(ぶらく)研(けん)に入(はい)ってることを言(い)いにくかったんやとか、実(じつ)は立場(たちば)宣言(せんげん)をして泣(な)いてしまうほどの思(おも)いがあったんやとか、どんどん見(み)えてきたものがあって。必(かなら)ずしも声(こえ)に出(だ)すことだけじゃなくて、黙(だま)ることで守(まも)っていることや表現(ひょうげん)していることもあるんやと気(き)がついた。
澄田(すみだ)　それは最終手段(さいしゅうしゅだん)としてはあると思(おも)うけど、大事(だいじ)なものを守(まも)るというより頑(かたく)なに身(み)を守(まも)るという感(かん)じやから、ものすごく寂(さび)しいし辛(つら)いやろうなぁ。　
健希(こんふぃ)　人(ひと)それぞれの状態(じょうたい)があるとは思(おも)うけど、やっぱり身近(みぢか)なところで気楽(きらく)に話(はな)せたほうがいいな。

出会(であ)う楽(たの)しさを伝(つた)える　
健希(こんふぃ)　私(わたし)は活動(かつどう)を始(はじ)めてたくさんの出会(であ)いから元気(げんき)をもらった。そのとき気(き)づいたのは、当事者(とうじしゃ)じゃない人(ひと)が活動(かつどう)することが、すごい展望(てんぼう)になるってこと。無関心(むかんしん)な人(ひと)とのつなぎ役(やく)にもなるし、同(おな)じ立場(たちば)の人(ひと)だけで活動(かつどう)してるよりも元気(げんき)がもらえる。立場(たちば)の違(ちが)う人(ひと)が一緒(いっしょ)にいることでお互(たが)いの考(かんが)えを知(し)るきっかけにもなるし。当事者(とうじしゃ)じゃない人(ひと)が疑問(ぎもん)を持(も)ったり行動(こうどう)に移(うつ)すことが増(ふ)えれば、それが変(か)わっていく始(はじ)まりという気(き)がする。
川人(かわひと)　私(わたし)は今(いま)まで、当事者(とうじしゃ)じゃないことで活動(かつどう)のなかで居心地(いごこち)の悪(わる)さとかやりにくさを感(かん)じてたから、今(いま)の話(はなし)はうれしいし励(はげ)まされるわ。
澄田(すみだ)　「差別(さべつ)される」というのは受動的(じゅどうてき)なものやから、差別(さべつ)がなくなるには差別(さべつ)する人間(にんげん)がいなくなるしかない。よく差別(さべつ)される側(がわ)が「当事者(とうじしゃ)」と言(い)われるけど、実(じつ)は差別(さべつ)してる側(がわ)もすごく当事者(とうじしゃ)やねんね。そこで義務感(ぎむかん)だけになるとしんどいけど、いろんな人(ひと)に出会(であ)い気(き)づくことで変(か)わる楽(たの)しさってあるよね。ワールドカップがそこに気(き)づいていく追(お)い風(かぜ)になっているとは思(おも)う。
健希(こんふぃ)　どれだけ人(ひと)に楽(たの)しさを伝(つた)えられるか、やね。差別(さべつ)意識(いしき)がないほうが人(ひと)との出会(であ)いを自由(じゆう)に楽(たの)しめる。究極(きゅうきょく)でいえば、どんな人(ひと)とも「私(わたし)として」出会(であ)えるのがいちばん楽(らく)やしおもしろいやろうな。いろんな人(ひと)と出会(であ)えば出会(であ)うだけ、その人(ひと)なりのアイデンティティがあるのが分(わ)かってくるし。だから、違(ちが)いはあっていい。違(ちが)いがあるほうが刺激(しげき)も発展性(はってんせい)もあって、おもろいやん。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〈了(りょう)〉

　　　　　　　　　　　　　　