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あんた、本当に新聞記者なの?B                       
2002年10月 6ぴきめ)

@ABCDEFGHI

 
 正義面(せいぎづら)した超大国(ちょうたいこく)よ、(つよ)ければ(なに)をしてもいいのか?


 
 報道(ほうどう)写真(しゃしん)(なか)で、(わす)れられないものがいくつかある。()どもや動物(どうぶつ)被写体(ひしゃたい)のことが(おお)い。高校生(こうこうせい)(とき)(せっ)した、戦火(せんか)のベトナムで()げまどうほとんど全裸(ぜんら)少女(しょうじょ)は、その()大人(おとな)になった写真(しゃしん)公開(こうかい)された。(ふじゆう)自由(ふじゆう)(からだ)()()げ、(なに)かを(うった)えている胎児(たいじ)性水俣病(せいみなまたびょう)少女(しょうじょ)は、金儲(かねもう)けのためなら(なん)でもする企業(きぎょう)とこれに(つら)なる官僚(かんりょう)学者(がくしゃ)醜態(しゅうたい)(なに)より雄弁(ゆうべん)告発(こくはつ)していた。いずれも、ジャーナリズム()(のこ)写真(しゃしん)である。最近(さいきん)仕事(しごと)でそんな衝撃的(しょうげきてき)外電(がいでん)写真(しゃしん)にぶつかった。

 写真(しゃしん)は4(まい)あり、撮影(さつえい)AP(エーピー)通信(つうしん)(エー)・ナビル記者(きしゃ)被写体(ひしゃたい)双子(ふたご)(おとこ)(あか)ちゃんなのだが、2人(ふたり)はお(しり)がくっついたまま、仰向(あおむ)けになって()いている。(あし)()わせて4(ほん)あるものの、その姿(すがた)は、ベトナム戦争(せんそう)枯葉剤(かれはざい)影響(えいきょう)とされた「ベトちゃんドクちゃん」を(おも)()こさせた。(べつ)のカットでは、(くち)ひげの医師(いし)2人(ふたり)診察(しんさつ)し、(わか)男性(だんせい)父親(ちちおや))と(くろ)いベールをかぶった女性(じょせい)祖母(そぼ))がそれぞれほ乳瓶(にゅうびん)でミルクを()ませている。英文(えいぶん)説明(せつめい)によると、舞台(ぶたい)はイラクの首都(しゅと)バグダッドのサダム()ども病院(びょういん)で、2人(ふたり)()はフセイン(くん)とハッサン(くん)記者(きしゃ)は「父親(ちちおや)は、わが()(からだ)分離(ぶんり)するための国際(こくさい)支援(しえん)(もと)めている」と()き、イラクでは経済(けいざい)制裁(せいさい)による食糧(しょくりょう)医薬品(いやくひん)不足(ふそく)()どもたちを(むしば)んでいる、と(むす)んでいた。米国(べいこく)のブッシュ政権(せいけん)()うように、たとえフセイン政権(せいけん)()くないとしても、この(あか)ちゃんに(なん)(つみ)があるのか、(なん)とか(たす)けてやりたいと(おも)うのが人間(にんげん)ではないのか、と無言(むごん)(かた)りかけてくる写真(しゃしん)だった。

 もっとも、よくわからない(てん)もある。イラクの()どもの先天性(せんてんせい)障害(しょうがい)、となれば、まず(あたま)()かぶのは湾岸(わんがん)戦争(せんそう)米軍(べいぐん)使(つか)った劣化(れっか)ウラン(だん)による放射線(ほうしゃせん)影響(えいきょう)だ。それで(かみ)()()けてしまった()どもの姿(すがた)は、これまでもフリーの写真家(しゃしんか)()(おお)紹介(しょうかい)されている。写真(しゃしん)説明(せつめい)に、その可能性(かのうせい)(ふく)奇形(きけい)原因(げんいん)について一切(いっさい)()れられていないのはなぜだろう。たぶん現地(げんち)言葉(ことば)十分(じゅうぶん)使(つか)えない記者(きしゃ)にとって、そこまで取材(しゅざい)するのは無理(むり)だったということかもしれない。AP(エーピー)米国(べいこく)通信社(つうしんしゃ)だから、自国(じこく)軍隊(ぐんたい)()()こした悲劇(ひげき)にそれ以上(いじょう)()()むのは()けた、というのは、あまりにうがった見方(みかた)だろうか。

 ともかく、(わたし)紙面(しめん)制作(せいさく)担当者(たんとうしゃ)にこの写真(しゃしん)使(つか)うよう(もう)()れ、(たが)いにあれこれ意見(いけん)()()った(すえ)、その()掲載(けいさい)見送(みおく)られた。他紙(たし)にも使(つか)ったところはなかった。

 

 (わたし)職場(しょくば)は、東京(とうきょう)など他本社(たほんしゃ)からの原稿(げんこう)処理(しょり)するのが最大(さいだい)仕事(しごと)だ。(わたし)自身(じしん)(がい)大出身(だいしゅっしん)のせいか、外電(がいでん)記事(きじ)担当(たんとう)(おお)い。必要(ひつよう)があれば手直(てなお)しをし、東京(とうきょう)からの記事(きじ)()()わない場合(ばあい)には時事(じじ)通信(つうしん)などのそれを()わりに()れたりもする。

 外電(がいでん)記事(きじ)一番(いちばん)(なや)ましいのは、どうしても超大国(ちょうたいこく)米国(べいこく)主体(しゅたい)になることだ。今回(こんかい)計画(けいかく)されているイラク攻撃(こうげき)は、相手(あいて)がまだ(なに)もしないのに「()められる危険性(きけんせい)」を理由(りゆう)先制(せんせい)するなど、(あき)らかな国際法(こくさいほう)違反(いはん)にもかかわらず、国際(こくさい)社会(しゃかい)十分(じゅうぶん)なブレーキ(やく)()たせずにいる。(つよ)ければ(なに)をやってもいい、()ける(ほう)(わる)いのだ、と()わんばかり。それならそうとはっきり()えばまだわかりやすいけれど、名目(めいもく)だけは自由(じゆう)だの民主(みんしゅ)主義(しゅぎ)だの、正義面(せいぎづら)をするから始末(しまつ)(わる)い。

 自分(じぶん)武装(ぶそう)(かく)生物(せいぶつ)化学(かがく)兵器(へいき)(ふく)めて)は()くて、他国(たこく)のそれは危険(きけん)だから規制(きせい)する、()うことを()かねば(たた)きつぶす、というごり()しを(ゆる)したくはない。(すく)なくとも被爆国(ひばくこく)たる日本(にほん)であるなら、せめて、そう主張(しゅちょう)できる政府(せいふ)()しい、と(おも)う。

  

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