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まねき猫通信99ひきめ(2010年10月1日発行)

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トリの眼・ムシの目・ニャンコの目 (巻頭コラム)

劇団『態変』が「自由からの逃走」と題した作品を発表した。九月初旬、大阪城公園に設えられたテント劇場は超満員…。主宰・金満里は「身体障害者の障害じたいを表現力に転じ、未踏の美を創り出すことができる」と主張する。身障者自身が演出・演技する劇団として二七年の歴史を持つ『態変』が、E・フロムを取り上げた意義は大きい。

彼は代表作「自由からの逃走」(一九四一年刊)で、「有機体としての成長と自己実現が阻まれるとき、人は一種の危機に陥る。この危機は、一方で自己と他者への自虐や攻撃性を産み、他方、権威への従属と自由の否定を唱える権威主義に向かう」と説いた。人は皆、自由に憧れる。しかし、仕組まれた「自由」こそが従属と支配の基礎なのである。劇中で数本の大砲から民衆に向かって発射されたのは、なんと無数の「パン」だった。

フロムは「人類の歴史は個性化の成長の歴史であり、また自由の増大していく歴史である」とも書いた。劇の最後は、役者全員が鏡を手に(持てない者は腕に巻いたり体に着けたり)して、雪の如くに降るラメの中で、「個性と自由」を燦々と輝かせた。『ダンス』でも『舞踏』でもない、まさに有機体の祝宴に「猛暑から逃走」できた夜だった。(パギ)

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