まねき猫通信110ぴきめ(2011年9月1日発行)
トリの眼・ムシの目・ニャンコの目 (巻頭コラム)
16年前の地震の朝、神戸で八百屋を営むKさんは九死に一生を得た。幸い店舗の被害は少なく、蓄えてあった野菜や果物を近所の人たちに配りながら「死んだらアカン、負けたらアカン!」と檄を飛ばした。Kさんの立ち上がりの早さが人々を鼓舞し、たくさんの命を救うことに繋がった。「相互扶助とかボランティアとか、そんな、コトバは後の後で知った。死にかけてる人や路頭に迷う人を目の当たりにして躰が先にうごくのはあたりまえや」。災害時には初動の的確さが重要な役割を果たす。行政の常備対策もさることながら、人情と思いやりの篤さが「初動」を決定づける。
行政に人情があるか? 電力会社に思いやりがあるか?「ない」から、彼らは原発事故対策の初動において決定的に誤った。冷却機能が失われた直後に海水を注入せず、水素爆発を防ぐための窒素も入れず、「想定外」という嘘で大衆を騙そうとした者どもこそ、断罪されて然るべきである。
神戸から、福島産の桃が大量に届いた。ヨウ素・セシウムなどの放射性物質は「検出限界以下」という『検査結果報告書』が添付されてあった。「みんな食べへんねん…うちは率先して食べるで」とKさんは怒っていた。風評被害など、人情と思いやりが篤ければ、はね返せる。(パギ)
目次
- 特集:原発被災地の今 命を守るのは、国でも学者でもない 佐藤幸子
- 当事者リレーエッセイ:車いすの目線を持つ一市民として 村上博
- 新聞の作り方81:脱原発の民意を新政権へ 石塚直人
- 吹田の生き物と人42:吹田のヘビ 高畠耕一郎